Dire Straits - 1978 -
Dire Straits


1, Down To The Waterline 水辺へ (03:55)
2, Water Of Love ウォーター・オブ・ラヴ (05:23)
3, Setting Me Up セッテイング・ミー・アップ (03:18)
4, Six Brade Knife シックス・ブレイド・ナイフ (04:10)
5, Southbound Again サウスバウンド・アゲイン (02:58)
6, Sultans Of Swing 悲しきサルタン (05:47)
7, In The Gallery イン・ザ・ギャラリー (06:16)
8, Wild West End ワイルド・ウエスト・エンド (04:42)
9, Lions ライオン (05:05)
[ Personnel ]
Mark Knopfler [lead guitar, lead vocals]
John Illsley [bass, backing vocals]
David Knopfler [rhythm guitar, backing vocals]
Pick Withers [drums]
Recorded : February 1978 at Basing St. Studios, London
Producer : Muff Winwood
Release : October 1978
Label : Vertigo Records(U.K.) , Warner Bros. Records (U.S.A.)


1978年に発売されたダイアー・ストレイツの記念すべきデビュー・アルバムです。ちなみに邦題は「悲しきサルタン」です。
プロデューサーはマフ・ウィンウッド。
スペンサー・デイヴィス・グループやトラフィックで有名なスティーヴ・ウィンウッドのお兄さんです。
このアルバムからダイアー・ストレイツ、マーク・ノップラーの栄光の歴史の幕は開いたのでした。

殆どの曲がデビュー前からのレパートリーでありアレンジ自体はかなりこなれた印象ですが、演奏がなんとなく伸び伸びしていない固い印象を受けます。
特に同時期のライヴやデビュー前のデモ・テープに収められていた演奏と比べると特にそういった印象を受けますね。

とはいえこのアルバムは魅力に欠けるのかと言われれば全くそんな事は無く、M-1[Down To The Waterline] のイントロからマーク・ノップラーのストラトによるコンプの効いた伸びやかなトーンが全開です。

アルバム初っ端のこの曲のイントロ部分でのギターの音色にいきなりヤラれてしまった人は多いんじゃないかと思われます。
かくいう私もその1人ですが、アルバム全編でノップラーのギターと渋すぎる程の苦み走ったヴォーカルが堪能出来ます。

曲調としてはカントリー&ウエスタン系に代表されるアメリカン・ルーツ・ミュージックの影響が顕著な軽快なテンポが多いですが、そこにイギリス特有の湿った感覚というかロンドンならではの街の風景がニヒルなトーンで描かれている印象です。

個人的には初めて聴いた時はどの曲も楽器のトーンが似ているせいか、似たり寄ったりの曲が多い印象を受けましたね。
素のままのサウンドを録音したのかもしれませんが、あの音楽性に対してスタジオっぽい質感の音になってしまっているのが原因ではないかと思われます。
ドラムやヴォーカルの生々しい質感に対してギターやベースは機械的な冷たい質感に仕上がっている様に聴こえます。
もちろん聴きこめば各曲の違いや魅力が解ってくるのですがこの辺りはもうちょっとバラエティに富んだ音色やアレンジを考えても良かったのかもしれません。

エルヴィス・コステロの名言に

「最初のアルバムを準備する時間は15年あるが、次のアルバムを準備する時間は15分しかないんだ」

というのがありましたが、ダイアー・ストレイツの場合もノップラーや他のメンバーもひょっとしたら仕上がりには満足していなかったかもしれません。
あるいはもしかするとデビューが出来て自分達のレコードが出せたという事で単純に満足していたかもしれませんが。(苦笑)

もっと少し厳しい言い方をするとマフ・ウィンウッドの力不足といいますかこのプロデューサーではこのバンドの魅力を引き出すプロデュース能力に限界があったのかもしれません。(苦笑)
ノップラー達は彼がプロデュースしたサザーランド・ブラザーズ (ロッド・スチュワートで有名な [Sailing] のオリジナルの人達) のレコードを聴いて彼にプロデュースを依頼したとの事でしたが・・・

しかし当時パンク、ニュー・ウェイヴ全盛のロンドンでこういったサウンドで正攻法で出てきたというのは極めて目立ったでしょうし、批評の的にもなりやすかったと思います。
なので最初は評論家からは概ね評価は高かったらしいですが、ツアーをしてもすぐにはチャートの上昇には結びつかなかったらしいです。

現にこのアルバムがヒットしたのは2ndアルバムのレコーディングが終わりリリースしようかというタイミングの頃だったそうで発売後約1年かかってチャートを駆け上がっていったそうです。

しかし何といってもこのアルバムの最大のポイントはM-6 [Sultans Of Swing (悲しきサルタン)] に尽きますね。

サウス・ロンドンのパブで自分達の曲の演奏を自慢しているアマチュア・バンドの男達の心情を謳い上げたなかなかの詩を淡々と語りかけるが如く歌うヴォーカルと、雄弁で哀愁に満ちたギターのフレーズの対比が素晴らしい一度聴いたら忘れられない魅力を持った名曲だと思いますね。

Dm → C → B♭→ A7 というコード進行はいにしえのThe Venturesの[ Walk Don't Run ] (日本では[急がば廻れ]のタイトルが一般的ですが) を彷彿させるかなり哀愁味を感じさせるキラー・パターンのコード進行なのでヨーロッパだけでなくアメリカや日本でも受ける要素を持っていたと思います。

またこの曲のピック・ウィザースのドラムワークも素晴らしく、特に巧みなハイハットさばきが曲に抑揚を付けるのに一役買っています。
とにかくこの曲だけで何ページも書けそうなぐらい魅力的な曲ですし、バンドを代表する、いやマーク・ノップラーを代表する永遠の名曲だと思いますね。
まだ聴いた事が無いという人は騙されたと思って一度聴いてみて下さい。私の稚拙なレコメンドでは伝え切れない程の何かがこの曲にはあります。
逆にこの曲が好きになれない人はノップラーやダイアー・ストレイツにはハマらないかもしれません。(´ヘ`;)

正に [悲しきサルタン] の前に [悲しきサルタン] 無し、[悲しきサルタン] の後に [悲しきサルタン] 無しといった感じです。

色々他のアルバムや他の曲に夢中になっても結局この[Sultans Of Swing]に還ってきてしまう、ある意味恐ろしい曲です。(笑)

またあまり知られていないのですが、オリジナルLPや旧規格のCDでは最後のギター・ソロが編集されていて少し短くなってしましたが、現行のリマスター版のCDではその編集されていた部分が録音当時のテイクに戻され多少長くなっています。

他の曲に関してですがM-3 [Setting Me Up] は1979年にアルバート・リーが自身のアルバム「Hiding」でカバーしており、エリック・クラプトンのバックを務めた際に1曲だけソロ・コーナーがありこの曲を演奏していました。(演奏しない日もありましたが。 f^_^;)

この演奏が聴けるアルバムとしてエリック・クラプトンの1979年の「武道館ライヴ ~ ジャスト・ワン・ナイト」がありますが、ダイアー・ストレイツのバージョンに劣らぬ素晴らしい演奏を披露しています。 

ちなみにアルバム・チャートでは全英5位、全米2位が最高順位となっており、現在までに全世界で1,500万枚の売り上げを記録しています。
これはデビュー・アルバムとしては最高の部類のチャートアクションだったのではないでしょうか?

またシングル・カットされた[Sultans Of Swing ]も全米4位まで上がる大ヒットになりました。
ちなみにこのシングルのB面にはアルバム未収録の[ Eastbound Train ]という曲が収められており、初期のライヴでは必ず演奏されていたアップテンポの軽快な曲です。
残念ながら未だにこの曲のスタジオ・テイクはこのシングルでしか聴けません。

閑話休題しますが兎にも角にもこのアルバムはダイアー・ストレイツの登龍門であり、このアルバムから栄光の歴史が始まったのです。
まずはこのアルバムから聴くべし!

<by Knopfleri (ノップレリ)>

個人的評価 ★★★★☆ (満点 = ★★★★★)